2019.04.29 [読書] 虚構時代の果て

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虚構時代の果て by 大沢真幸.
自分の中で社会科学のトレンドが来ていたので,6年ぶりに読了.

オウムは何故,地下鉄サリン事件を始めとする事件に走ったのか?
一見すると,教団の活動は虚構・パロディに見える.しかし,そのパロディが何故,現実化したのかが問題なのである.
現象の理解は難しい.まずは,その第一歩として現象の説明を試みるのがこの作品である.
オウムを他人事の様に考えるのはたやすい.しかし,社会の一部として理解する必要があるのだ.

骨子は,オウム真理教と,その教団が起こした事件に対する考察(説明付け).
「ものぐさ精神分析」と同様,著者の都合の良い情報だけを抜き取ってきてストーリーを形成している感は否めない.
しかし,理論の発達していない社会科学は未だそれで良いのかもしれない.まだ,一貫して物事を説明付けられるストーリーが提供されていないのだろう.


  • あとがき
    • 自分の中にオウム的なものがある,という自覚.
      • 終末思想のパロディやくだらなさ.しかし,そこに魅せられてもいる.
    • 同様の試みに,カール・マルクスによるナポレオン3世の分析がる
      • フランス革命を為した後のフランスで,民主的に独裁者を排出.
      • これを嘲笑していたのでは,何も始まらない.
  • 妄想の相互投射
    • 我々とオウムは,お互いに相手を自分に危害を与える者として認識していた
      • 陰謀史観を相互に投射する時,その実証の表れとして,自己成就的に達成されてしまう
  • 戦後の時代
    • 現実と理想
      • 理想は未来の何れかに置いて着地することが想定されている
    • 現実と夢
      • 理想の理想性に固執 ==> 理想は自己否定に繋がり,理想は虚構に近い形で再生
      • 理想の時代は,その末期に理想の否定を図る
    • 現実と虚構
      • 虚構は現実とは無関係な可能世界
      • 虚構の時代も,その末期に虚構の否定を図る
  • 終末論
    • 肯定的終末論
      • キリスト教的.有限な時間を想定.
      • しかし,近代科学の発展は,時間の有限性を否定.
    •  否定的終末論
      • 「無限な時間」を否定するものとして,産出される
      • 生への名状しがたい空虚に苛まれた若者が救われる
        • 不幸の源泉を突き止めたい訳ではない
  • 虚構と現実
    • 最も大事な問い: 虚構と現実がどうして混同されたのか?
      • 人が虚構に準拠するのは,当人が虚構を信じるからではない
      • その虚構を信じている他者の存在を信じることが出来るから
        • アイロニカルなのは他者である
        • しかし,その他者の存在は信じられる = 虚構を信じていることと殆ど同義
        • この枠組みが,虚構の現実化に繋がる
  •  旧宗教との対比
    • 旧・新宗教(PL,創価,立正)
      • 貧困からの救済
    • 新・新宗教(阿含宗,オウム,幸福の科学,統一教会)
      • 特定しがたい「生の苦しさ」
      • 現世離脱傾向
      • 心身変容への関心の高さ
      • 教団よりも個人に関心を持ち,自己責任の論理を徹底
      • 終末思想
      • 信者の多くが若者


増補 虚構の時代の果て (ちくま学芸文庫)

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