利根川進: 精神と物質
Book of the year in 2011
利根川進がノーベル賞を受賞した後の,記者との対談をまとめた本なのですが,文中に多々,科学者としての心にズサズサと突き刺さる言葉が並べられてあります.
先生曰く,
「どうでもいい事をやっているのに,大事な仕事をしたつもりになって,一生を終えるサイエンティストが多い訳です.」
「サイエンティストの大半は,どうでもいい事をしている人たちです.彼らはサイエンティストを自称して,サイエンスを飯の種にしているけれど,サイエンスの側からしたらどうでもいい人たちなんですよ.」
「科学で一番大事なのは,自分自身をコンヴィンスさせる事なんです.それが本質的かどうか,徹底的に考えることが大事です.」
僕は,未だに自分のテーマ設定を悩んでいる若造なので,この言葉はひどく傷つきました.
科学者として,世の中に貢献しようと志した以上,重箱の隅をつつくような研究はしたくない.
しかれども,人間は弱いので,いつしか「自分のやっている研究=是」と認識してしまうわけです.
この本は,その甘い心を覚ませてくれました.
今やってる研究テーマは,とりあえず論文にはなるだろうけど,その先にもっと大きな世界がある気がする.
それを常日頃考え続けようと,再確認した本でした.