田中順平 「心を回復する機能」
もともと,「人間が自己肯定感」「根拠もなく自分が自分でいて良いという承認」などがどの様に形成されるかという点に興味があり,カウンセラーをしている氏のウェブサイトにたどり着いた.これが良くできている.[LINK]
折角なので,ということで一冊本を読んでみる事にした.タイミングも重なり,なかなか刺さる記述も多い.
大事な点のまとめ
- 心の苦しさの解決とは
- 否: 苦しさの原因を取りぞく事
- 正: 心が苦しいと感じた時に,対処する方法を知っている
- ライフスタイル
- 心の苦しさを生む信条
- つらいことがあっても,誰かを頼っても仕方がないから,黙って我慢する
- 辛い気持ちになってはならない
- 苦しくない人生がある.
- 書き換えたい信条
- 辛くなっても,誰かを頼って泣けば,心はすっきりする
- 心が苦しくなっても,その都度回復すればよい
- 苦しくない人生などないが,苦しみ続けなくても良い人生はある
- 心の苦しさを生む信条
- 心を回復させる方法
- 心を楽な状態にして問題を見つめ直す
- 人に話を聞いてもらい,涙を流す(つらさは解消されるという学習体験をする)
- 感情を伝え,感情を受容してもらう
- 自己を受容する: 自分はよく頑張った.悪くない.
- その他
- 鬱的な気持ち: 「自分の辛さ」を押し殺してきた結果,「そもそも何がしたいか」すら分からなくなっている状態
- 何もしなくていい状態に身を置き,ゆっくりしましょう
- 鬱的な気持ち: 「自分の辛さ」を押し殺してきた結果,「そもそも何がしたいか」すら分からなくなっている状態
その他・心についての理解のために
- そもそも感情の目的: 行動を起こすこと
- 1.0 刺激・出来事 e.g. 空腹
- 2.0感情,思考,行動
- 2.1 感情,感覚 e.g. お腹が空いた
- 2.2 思考 e.g. パンを食べよう
- 2.3 行動 e.g. パンを手に入れて食べる
- 3.0 終了 e.g. 満腹になる
- 悩みを抜け出せない時は,行動に移せていない可能性を疑ってみる
- 悩み=心が苦しい感覚 + (行動によって解決するべき)課題
- 「心の苦しさ」と「行動できない」問題
- 行動できないから苦しいのか,苦しいから行動できないのか分からなくなってしまう
- 心が苦しいときに感じる「課題」は,「心により作り出された課題」であることが多い
- 心を楽な状態にした後で状態を見つめ直すと,作り出された課題から離れて真の課題に気付ける
- 「心の苦しさ」と「行動できない」問題
- 心により課題を作り出すプロセス
- 辛い状況をバネにして,課題を解決する為に努力する(PDCA)ことを
- この繰り返しにより,「課題を見つけては解決する」ことに執着してしまう
- その結果,「自分がそもそも何を大切に思っているのか」分からなくなる
- 人間の出来事に対処るする流れ
- 「感じて」「考えて」「行動する」
- この感じる部分を無視して,考えるプロセスに移行しがち
- 今,感じている辛さを感じなければ,心にダメージを受けなくて済む
- 辛い事を笑いながら話す(問題).楽しい事をつまらなさそうに話す(桜舞賞).
- しかし,自分に生じる感覚や感情は,それが何であれ,全て妥当な感覚や感情!
- 感じる自分がおかしいわけではない.
- 「考える事」の目的は,課題を解決すること.心の苦しさに対処することではない.
- 「心の苦しさ」に対処する方法は,ただその感情を認めて抱きしめる事
- 葛藤について
- 正しい葛藤: やりたい気持ち + やりたくない気持ち
- 誤った葛藤: やらなければならない + やりたくない気持ち
- =誤った葛藤: やりたい気持ち + やらないで辛くなるのは嫌だ + やりたくない気持ち
- 自分が「~せねばならない」と感じているときは,「やって(or やらなくて)辛くなるのは嫌だ」と考えていないか?
- ALL or NOTHING思考の源泉: その1
- (1) 自分の感情・思考が否定され続けたという過去・学習
- =自分の感情に従って行動すると,相手に否定されてつらい体験になるという学習
- (2) 自分の感情に従うよりは,「その場のルールに合致しているか否か」で判断する傾向を生む
- ルールに従って生きる,という価値観は,経験に基づく当然の帰着
- (3) その学習を持った状態でルールの無い状況に置かれると
- a. 過去に身に着けたルールに従って行動しようとする
- b. その世界にはないルールを作り出そうとする
- c. 自分が新しいルールを作り出し行動する
- (4) ルールに当てはまっているかどうかで判断する = All or Nothing思考
- (1) 自分の感情・思考が否定され続けたという過去・学習
- ALL or NOTHING思考の源泉: その2
- (1) 言っても受け入れられないという過去の体験
- (2) これだったら受け入れられるのでは,という最終提案まで自分の中で練り上げる
- (3) その最終提案が受け入れられない時,人は非常なショックを受ける
- その結果として
- 気分が不安定で,時と場合により言うことがコロコロ変わる
- 他者を許容するゆとりが無くなり,自分の感情・感覚を優先させる傾向が強まる
- 特定の価値観に執着し,他者の価値観を受け入れられない
- 「自分」とは,自分の体 + 自己意識 + 自分の心
- 「心」に関する大きな勘違い: 「人には心があり,心が自分そのものである」
- (1) 感情を胸に感じるという学習(e.g. キュンとなる)
- (2) 胸のあたりにある様々な感情的なことを感じる部分を心と錯覚
- 自己意識は,「自分は自分である」という認識だけを担当する部分
- 心と体に感じた事を自分の事として認識する
- 指を怪我した場合 ==> 自分の指が痛いと認識する
- 胸部の不快 ==> 自分の心が苦しいと認識させる
- 「心」に関する大きな勘違い: 「人には心があり,心が自分そのものである」
- 「学習」について
- 効率的に危険を回避するために,分析や思考を短縮させて行動する
- 無意識にコントロールされているというよりは,意識に上がらないだけ(短縮)
- 行動の動機の正体
- (1) 五感からの刺激 ==> モヤモヤ感
- (2) 過去の探索・状況の分析 (この探索に,その人間の世界観=ライフスタイルが大きく影響)
- (3) 思考
- (4) 行動
- モヤモヤ感 = 不快感の様々
- a. 身体的不快感
- b. 理解できないことに対する不快感
- 疑問に対して,自分のライフスタイルに持ち込んで理解しようとする
- それでも処理しきれない時に,そのまま放置される
- c. 不快感の蓄積 ==> 生理的不快感を引き起こす
- 「やりたいことが出来ない」「思ってることが言えない」=過去の学習結果
- 心理的に追い詰められる
- つらい気持ちのまま放置される
- 感覚や感情を否定される
- 効率的に危険を回避するために,分析や思考を短縮させて行動する
- 課題から逃げる or 課題と向き合う
- BAD: 苦しんで解決したら心が強くなる
- GOOD:まずは心を楽にする
- 人生の考え方: そもそも,気持ちの上がり下がりはある
- 気持ちの下がる時期にどうするか(どうやって回復するか)=心を回復する
- BAD: 自分の感情・考え方・他人の否定や,現実逃避
- つらい気持ちを「心を回復させる」こと以外で対処すると
- 辛さの原因や問題を探すことになる(問題を作り出すことすらある)
- 気持ちの下がる時期にどうするか(どうやって回復するか)=心を回復する
- 感情を放置した時の特徴的な思考: 事象の分割
- 嫌なこと・つらいことがなければ辛くないのに,と反対の事象を想像する(辛さの原因を探している状態)
- 心が回復できなくなる背景
- 例) 子供がわがままを言い叫んでいるとき.
- この時,子供が一番欲しがっているのは,「心が穏やかな状態になる」こと
- 子供があやしてもらえない時
- 出来事に拘り
- 心がつらくなっても回復できないという体験をし
- 何かが変わるまで泣き続ける
- 子供があやしてもらった時
- 不快感を吐き出して安心してもらおうとする
- つまり,子どもの頃の「感情を大切にしてもらえた」という経験の多少が重要.
- 反対に辛さを我慢する子供
- 「自分の気持ちを我慢して」母親の愛情を受け取る
- 前者は意識に上がらなくなっていき,母親をただ愛情をくれる存在と認識
- 心の苦しさを「自分の認識が悪いから」と認識し,自分に原因を求める=感情を我慢する体験を重ねる
- 例) 子供がわがままを言い叫んでいるとき.
- 人間の成長のプロセスより
- 第一段階: 乳児期
- 良く分からない不快を抱きしめてもらって安心な気持ちになって眠ること
- 第二段階: 幼児期
- 親の役割分担(叱り役とあやし役)
- 大事なことは,嫌な気持ちになってもそれを回復できると知っていること
- 悪い学習: 嫌なことは自分一人で耐えるしかない
- 第三段階: 地域社会期
- 他人の子供も叱るし,他人の子供も抱きしめる
- 第四段階: 学校社会期
- 嫌なことをしてしまう(される)気持ちが救われる体験
- 嫌な気持ちになった人を救う体験
- 第一段階: 乳児期
- その他
- 相手が悪いときには謝ってくれる人でも,いつも怒ってしまう
- 原因は相手よりも自分の側にあることが多い
- 自分の中の相手と,実際の相手の間に生じているギャップ
- 「分かり合う」という事
- (1) 相手の言ってることが理解できない
- (2) 自分の言ってることを理解してもらえない
- 多くの場合,「分かり合えない」=「自分のことを理解してもらえない」
- もし相手から全く歩み寄りを感じ取れない時は
- 自分が,相手が歩み寄ってくれていることに気付かない
- 相手が,全く歩み寄れない
- なぜ,相手の歩み寄りを信じられなくなるのか?
- e.g. 相手がかたくなに自分の考えだけを通そうとする人の場合
- 相手の言ったことを理解する=自分の気持ちを我慢して相手の思う通りに行動する
- 相手が自分の思った通りに行動しないと,自分が否定されたと感じる
- 白黒つけたいという性格に起因.ALL or NOTHINGと同様.過去の体験に起因.
- 「受け入れる」とは
- 現実を肯定することではなく,「自分の嫌な気持ち」を肯定すること
- 「心配を掛けたくない」という感情
- 相手に心配をかけることが良くない状態だと認識している(=避けたい)
- 良くあるケース.心配に対し,相手から指導される(あなたの行動に問題があると)
- でも,本当に解決したいのは「課題」ではなく「心がつらい」という感情.
- 結果,心配をかけると辛さが増す.
- 結局,この感情が生まれるのは過去の体験に依る
- 自分のつらい感情を我慢してきた
- 相手の心配する気持ちを受け止めてきた
- 相手の感情を自分が解決してきた
- 相手が悪いときには謝ってくれる人でも,いつも怒ってしまう
- 個人的に大事なポイント
- 鬱的な気持ちは,「自分の辛さ」を押し殺してきた結果,「そもそも何がしたいか」すら分からなくなっている状態
- 悩み=課題 ではない.悩みとは,「心が苦しい状態」と「課題」
- 心の苦しさに対処する方法は唯一つ.感情を認めて「抱きしめる」こと.
- この課題が,本当の課題かどうかは注意を払う必要がある.
- 心を楽な状態にした後で状態を見つめ直すと,作り出された課題から離れて真の課題に気付ける
- あの頃に戻りたいという感覚
- a. そもそも,あの頃の様に過ごすと,今のような状態になる
- b. あの頃楽だったのは
- 嫌なことが起こらなかった, or 嫌な気持ちを感じない事にしていた, or 我慢していた
- c. 問題がない時期は,得てして「嫌なことを我慢している」事が多い.遅かれ早かれ.
- 親になった時
- 感情的になる時は,自分の経験によって得た枠組みを相手に押し付けている可能性を疑ってみる
- 最も避けるべきことは,相手が経済的弱者であることを理由に自分に服従させること