虚構時代の果て by 大沢真幸.
自分の中で社会科学のトレンドが来ていたので,6年ぶりに読了.
オウムは何故,地下鉄サリン事件を始めとする事件に走ったのか?
一見すると,教団の活動は虚構・パロディに見える.しかし,そのパロディが何故,現実化したのかが問題なのである.
現象の理解は難しい.まずは,その第一歩として現象の説明を試みるのがこの作品である.
オウムを他人事の様に考えるのはたやすい.しかし,社会の一部として理解する必要があるのだ.
骨子は,オウム真理教と,その教団が起こした事件に対する考察(説明付け).
「ものぐさ精神分析」と同様,著者の都合の良い情報だけを抜き取ってきてストーリーを形成している感は否めない.
しかし,理論の発達していない社会科学は未だそれで良いのかもしれない.まだ,一貫して物事を説明付けられるストーリーが提供されていないのだろう.
- あとがき
- 自分の中にオウム的なものがある,という自覚.
- 終末思想のパロディやくだらなさ.しかし,そこに魅せられてもいる.
- 同様の試みに,カール・マルクスによるナポレオン3世の分析がる
- フランス革命を為した後のフランスで,民主的に独裁者を排出.
- これを嘲笑していたのでは,何も始まらない.
- 自分の中にオウム的なものがある,という自覚.
- 妄想の相互投射
- 我々とオウムは,お互いに相手を自分に危害を与える者として認識していた
- 陰謀史観を相互に投射する時,その実証の表れとして,自己成就的に達成されてしまう
- 我々とオウムは,お互いに相手を自分に危害を与える者として認識していた
- 戦後の時代
- 現実と理想
- 理想は未来の何れかに置いて着地することが想定されている
- 現実と夢
- 理想の理想性に固執 ==> 理想は自己否定に繋がり,理想は虚構に近い形で再生
- 理想の時代は,その末期に理想の否定を図る
- 現実と虚構
- 虚構は現実とは無関係な可能世界
- 虚構の時代も,その末期に虚構の否定を図る
- 現実と理想
- 終末論
- 肯定的終末論
- キリスト教的.有限な時間を想定.
- しかし,近代科学の発展は,時間の有限性を否定.
- 否定的終末論
- 「無限な時間」を否定するものとして,産出される
- 生への名状しがたい空虚に苛まれた若者が救われる
- 不幸の源泉を突き止めたい訳ではない
- 肯定的終末論
- 虚構と現実
- 最も大事な問い: 虚構と現実がどうして混同されたのか?
- 人が虚構に準拠するのは,当人が虚構を信じるからではない
- その虚構を信じている他者の存在を信じることが出来るから
- アイロニカルなのは他者である
- しかし,その他者の存在は信じられる = 虚構を信じていることと殆ど同義
- この枠組みが,虚構の現実化に繋がる
- 最も大事な問い: 虚構と現実がどうして混同されたのか?
- 旧宗教との対比
- 旧・新宗教(PL,創価,立正)
- 貧困からの救済
- 新・新宗教(阿含宗,オウム,幸福の科学,統一教会)
- 特定しがたい「生の苦しさ」
- 現世離脱傾向
- 心身変容への関心の高さ
- 教団よりも個人に関心を持ち,自己責任の論理を徹底
- 終末思想
- 信者の多くが若者
- 旧・新宗教(PL,創価,立正)