エジプトの学生さんにノピア人博物館を案内してもらいました.
「今,エジプトでノピア人だけの国を作りたいって人は居るの?」
「少しはね.でも僕は,アラブで一つの共同体を作るべきだと思う.」
この辺,ナセル大統領の描いた夢は紡がれている.
「何が妨げになってるんだろう?」
「軍と,一部の特権階級の人たちだね」
「民衆と彼らの対立を,望んでいる国はあると思う?」
「言ってることは分かるよ.ステイツだろ?」
歴史的に見て,近代の中東は列強の利益のために,無益な対立を強いられてきたのは確かだろう.
さて,日本(アジア)の場合はどうでしょうか?
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まぁ,そんなことを考えながらの旅でした.今回の旅の裏目的は,「文化・歴史・民族を知る」だったので,その辺りでまとめていきたいと思います.
彼らはよく知られるように非常に敬虔で,一日五回のお祈りを欠かさない.(一部,そうでも無いような人も居たが,キリスト教なのかもしれない)
その宗教への敬虔さがどの寄与しているか分らないが,非常に親切である.道行くおじさんたちも気さくで,「ヘイ,アーユー ジャパニーズ? グッド!!!」みたいな感じで普通に話しかけてくる.特に物を売りつけてくるわけでも無く.
観光地に行くと,流石に押し売りが多いのだが,僕がエジプトに好感情を持っているせいか(旅の間中,現地のカウンターパートに非常にお世話になった),アジア圏の押し売りに比べて,あまり嫌な気もしない.何というか,引きが早い.なんか考え方の根底に,「人には親切にする,嫌なことはしない」っていうのがある気がする.街を歩いても,英語が通じる人が多いという安心感からか,不安な感じがあまりしない.
研究室の留学生なんかを見ていても,彼らは同胞の指導に本当に献身的である.見返りを求めない親切みたいな物を,そこには感じる.その献身さが,宗教による物か,民族による物かは,今の時点では分からない.これから,他のイスラム圏に行く機会があれば,その辺も自分なりの解答は得ていきたい.
また,非常のおしゃべり好きなのも,ちょっとうらやましかった.レストランで隣の先になった人たちと,仲よさそうにおしゃべりを始める.日本人は,彼らに比べれば,かなり寡黙な民族に見えるだろう.
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町中を歩くと,社会に出ている人たちの殆どが男性である.イスラムは男性社会なんだなぁって実感する.しかし,女性の社会進出の兆しもすごいそうで,大学への女性入学者が非常に増えてきているらしい.また,女性がするかぶり物も,年配の方は大体黒一辺倒なんだけど,若い子はカラフルだったり,ファッショナブルだったりで,女性の社会的自立みたいな流れを感じた.
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エジプトはナイル川近傍以外は砂漠の国でして,水が無いと生物って生きてけないんだなって実感.まぁ,そういった風化の効果が少ないからこそ,数々の遺跡やらピラミッドやらが残ってるんでしょう.
そういった遺跡を訪れると,古代エジプト人の文明の高さに本当に驚く.神殿の壁は象形文字で埋め尽くされているし,どれも非常に巨大な建造物である.子供の時に行ってたら,考古学者を志していたかもしれん.なんで,この地にそこまでの文明が発達したのか?それはやはり,乾燥地に流れる巨大河川っていう条件が大きい.
メソポタミヤや黄河文明も一緒で,古代文明はこの条件下で起こっている.
1.水が豊富に使える
2.太陽光を,安定して得られる
モンスーンみたいな場所だと,水の供給が十分でも,長雨なんかによる日射不十分の可能性もある.それで,農耕社会の定着が遅れたんじゃ無いかと思っています.昔はともかく,灌漑の発達した今の日本でも,日照りに不作なし,と言われてる.
また,農耕が定着した後は,文明は急速に発達する,と思う.(日本も論拠にしようと思ったが,大陸の影響もあって一般化は出来ないと判断)。と言うわけで,早い段階で農耕社会を確立出来たことが,エジプト文明の成因だろう.
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これからエジプトはどうなるんだろう.最近の時事で良くあるように,民主化は進んでいて,これから発展するのは間違いないだろう.田舎に行くと,本当にたくさんの警官が居て,国家の不効率な運営で,どれだけの予算が無駄に使われているか,と思わされる.また,国家強制力の強さを(日本に比べて)感じる場面も節々あった.大きすぎる政府も困りもの.割くべき投資をしてこなかった政府のツケが,今の国民に及んでるんだろう.カイロの渋滞も滅茶苦茶ひどい.どれだけの労働力を損なってるのか.
農業は今後も続けるとして,砂の国で工業発展してる国ってあるのかな.地下資源も中東に比べたら少ないと思うし,この国の今後は注目していきたい.ちょっとモデルケースが見当たらない.
しかし,民族自体は勤勉で真面目であると思うので,出来ることなら,自分の仕事でも手助けしたい.エジプト人も,幸いなことに日本人を好きだし,尊敬していると思われる.
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別れ際,飛行場まで送ってくれた運転手さんに,チップで600円くらい渡した.結構旅の間中,結構お世話になったのです.こちらとしては,彼の厚意に少しでも応えたかったのだが,彼は悲しそうな顔をした.
実際この状況でチップなんてもらったら,僕は悲しい.自分として社会的道義心で行った厚意を,金銭換算されたと感じるからである.まぁでも,エジプトはチップが浸透してるし(警官ですら要求してくる),という甘い考えが甘かったです.(この辺り,イスラエルの幼稚園の話も面白いですよ.日記”予想通りに不合理”にちょっと書いてます.)
イスラム教の教え(若しくはエジプト人)は,社会的道義心を厚くする.一方,大英帝国の支配は,西洋的合理化主義を導いたのか.
生きるためにはしょうが無いんだが,やはり低所得なんだろうと思われる人はやたらチップを要求する.一方,社会的地位のある人は,全く要求しない.これは,イスラムの喜捨って精神に基づく物なんだと思う.今後,社会が経済的に発展していく中で,彼らの社会的道義心はどう変わっていくのだろう?
社会の経済的発展は,人々を西洋的な合理的思考に導くんじゃ無いかと僕は思っています.思いやりが無くなった.冷たくなった.なんて,日本人に言われる指摘も,この辺に原因があると思ってます. 就職活動の最前線で一番「カッコイイ」とされるのは,外資投資銀行,外資コンサルです.大勢の人たちは「年収が良いから」なんて事を平気で挙げる(本当に入社する人は,たぶん言わない).
人々は合理的(利己的)でありすぎる社会が良いとは,僕は思えない.やけど,「正直者がバカをみる」ように,この現代は見える。この辺りの思想の対立は,結局,ケインズ経済と新自由主義の対立に似てますね.