2013.01.06 [考え事] アウシュヴィッツ その1

大学の冬休みを利用してアウシュヴィッツに行ってきました.自分へのインパクトは大きかったんで,忘れないうちにメモを残しとこうかと.

僕にとっては,歴史を知る場所というよりは,自分の内側と向き合う場所って感じでした.また,昨今の日中韓の問題もあって,東アジアにおいての我が国の在り方についても考えさせられます.というわけで,アウシュヴィッツで感じた事なんぞをつらつら書いていこうと思います.

二度の世界大戦を経て,EUを設立して,協力体制を築いていこうとしているヨーロッパ.一方,ここ数年で対立の深まっている日本と中韓.

今書いてるこの時点では,結構知識が不足しています.EUの設立・問題なんかは日本に帰ってから本とかかって読みたいと思う.というわけで,以下の記述は基本的に自分の思考から出ている話なので,知識が負臆しているとことがあるかも.

テーマは,性善説と性悪説.これは,自分が生きる上でのテーマだったりもするんだけど.
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EUの設立
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EUの最初は,ECだっけ?名前はともかく,長い間戦争のきっかけとなってきたドイツ・フランス間にある資源地域を,第二次世界大戦後に両国で共同開発していきましょう,という話だったと思う.

○性善説的味方
ヨーロッパは二度の世界大戦を経て大いに疲弊した.特に第二次世界大戦は,一般市民が戦争に巻き込まれて大いに犠牲者を出す戦争になった.この辺,イギリス首相のチャーチルの言った言葉は,流石に時代を見通している.これは確か,第一次世界大戦後の言葉

「戦争からきらめきと魔術的な美がついに奪い取られてしまった。アレキサンダーや、シーザーや、ナポレオンが兵士達と共に危険を分かち合い、馬で戦場を駆け巡り、帝国の運命を決する。そんなことはもう、なくなった」

「これからの英雄は、安全で静かで、物憂い事務室にいて、書記官達に取り囲まれて座る。一方何千という兵士達が、電話一本で機械の力によって殺され、息の根を止められる。これから先に起こる戦争は、女性や、子供や、一般市民全体を殺すことになるだろう。やがてそれぞれの国には、大規模で、限界のない、一度発動されたら制御不可能となるような破壊のためのシステムを生み出すことになる」

「人類ははじめて自分たちを絶滅させることのできる道具を手に入れた。これこそが人類の栄光と苦労のすべてが最後の到達した運命である」

やはり,人間として,こういう悲劇は二度と繰り返してはいけないと思う.じゃあ,何故戦争になったのかを考えねばならない.っていうか,今の地球上での戦争は,どうやったらなくなるかな?

僕なりには,以下の二つが考えられると思う.
(i) 宇宙人が攻めてくる
(ii) 国家という概念がなくなる

これには共通した考えがあって,”紛争は常に,その住民が属していると考えるコミュニティ同士で起こってきたんだ”と言うことである.コミュニティ内は仲間な訳で,それ以外との戦いになる.村,邑,町,郷,国,国家,宗教.こんな感じで,人類が起こしていた戦争は,時代を経るとともにその空間スケールが大きくなってきている.上の二つは,それを解消するための方法である.

EUというのも,その為の一つの試みではないか?ヨーロッパは,二度の世界大戦の主戦場であり,多くの民族の利害関係から過去の対戦は引き起こされ,多くの人命を失っている.国家・民族がその悲劇を引き起こしたのであれば,それを取っ払って,共存・共栄を計ろうというのも,尤もな話である.

○性悪説的味方

二度の世界大戦は,時に”ヨーロッパの自殺”とも呼ばれる.また,太平洋戦争を見て,負けたのは日本,しかし経済的に敗北したのはヨーロッパという見方もある.実際に第二次世界大戦後には,アジア諸国の独立,アフリカ諸国の独立と続き,ヨーロッパ諸国は多くの植民地を失っている.

彼らの歴史的行為を見ると,どこか”白人種は有色人種に勝る”といった考えがあるようには思う.勿論,全ての人が思っていた,という訳ではないが.白人種にとってみれば,二度の世界大戦は,自分たちの諍いによって多くの権益を失った期間,とも見ることができる.

二度の世界大戦の後,多くのアジア・アフリカ諸国が独立していく過程を見つつ,「このままでは,自分たちのプレゼンスが落ちていく一方では?」とは思った可能性もある.性善説の積極的理由と違って,こういう”起こっている問題に対処するため”という,消極的なモチベーションも,EU設立にはあり得ると思う.

実際のところ,どちらもあり得ると思うし,両方の考えが混在したEUなのだろうと思う.しかし,どちらの志向ががより強かったのかは,知りたいところ.そんな感じで,自分でも調べてみます.

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アジア諸国,中国・韓国との付き合い
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自国の太平洋戦争についても,性善説・性悪説的な見方は双方できる.

性善説的に見れば,アジア諸国で大東亜共栄圏を築く,といったものは挙げられるだろう.しかし,性悪説的な侵略戦争とも見れるし,少なくとも韓国・中国はそう見てると思う.この辺は自国として性善説的に見たいところだけど,謙虚に客観的に見るとそうとは言えないだろう.

余談ですが,中国からの留学生と話してて,太平洋戦争の話になった.(英語やと,単語が出やすい真面目な話になりやすい).「日本が戦争を起こした理由は理解はできる.資源はなかったし,あの状況でハル・ノートは受け入れられるものではなかっただろう.しかし,多くの中国一般市民を殺したことは許せない.」

こういう本音を話してくれることは,非常にありがたい事です.っちゅーか,そこまで理性的に見てくれてることだけでもありがたい.正直,日本人としてEXCUSEもしたい.第二次世界大戦からは,兵器の進歩から戦場が都市市街に変わり,ヨーロッパ戦場でも多くの都市が破壊されている.でも,これはあくまでも加害者側の論理であり.被害者側には決して言えないし,言っちゃいけない.
閑話休題,では,アジア諸国とどう付き合っていくべきか.僕的には,性善説的・性悪説的に見ても,アジア圏での共同体を築いていくのが理想だとと思う.勿論,多くの困難はあるとしても.

これは性悪説的な見方でですが,日中韓の蜜月をもっとも恐れているのはアメリカである,との見方もある.実際にアメリカは領土への見解一つで3国間の関係を変えれるキャスティングボードを握っているし,アメリカにとっては”日本と中韓でずっと争っていてくれた方が良い”のは,自分のプレゼンスを保つ上で確かな気がする.

残念ながら,国家と国家として対峙した時,中国・韓国とは多くの問題を抱えている.だけど,個人としての中国人・韓国人と接したことがある人は,彼らの多くはナイスなやつだと思ってると思う.僕自身は,個人と個人として,彼らとこういう話をして,より深く中国人・韓国人のマインドを見ていきたいと思う.

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ドイツ人の現在
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こんな記事が気になった.完全に覚えていないので,事実誤認が有るかもしれないけど,定性的にはこんな感じ.

ドイツ人若者の右傾化は良く報じられるところで,トルコ移民の排斥運動は,聞いたことがある.それに対する,ドイツ人若者の不満.日本人にとっては,在日の方々に置き換えると近いかもしれない.ドイツ右傾若者が,トルコ移民を暴行死させる事件があった.メリケル首相は遺族の元を訪れ,慰霊の声明を出す.このことはメディアでも大きく報じられた.

その一方で,アフガニスタンで失われた多くのドイツ兵士のことに対する報道は少ない.確かに世界大戦中のドイツ人は大きな誤りを犯した.しかし,それが故にドイツ人は未来永劫,攻められ続けられるのか?ごく少数の右傾化若者は大きく報じられ,特に海外ではすぐに「ドイツ人若者の右傾化」とレッテルを張りたがる.逆に,国際秩序への貢献は全く評価されない.いつまで,われわれドイツ人若者は,過去の負の遺産を抱いていけば良いのか,と.

うーん.確かに,そう思ってもしょうがない.これは日本に置き換えてもよくある話で,何かあれば「過去の歴史を反省し...」という言葉が聞こえる.こういう考えも分かるんですよね,っていう話をしているときに,アウシュヴィッツガイドの中谷さんがこんな話をした.

こないだ,ギリシャで財政危機が訪れた時に,ドイツのメリケル首相がギリシャを訪問した.ドイツ国民の血税を注いで,ギリシャの財政を立て直せんがために.メリケル首相を空港で待ち受けたのは,ナチスの象徴である鉤十字の旗を掲げたギリシャ人である.そのことは全く報道では報じられない.一方でメディアはドイツ人の右傾化,と言うことはすぐに報じたがる.しかし,今のドイツ人はそれに反発しない.そして反発しないことを,多くのEUの人々が見て,ドイツ人を信用している.そうやってドイツ人は,EUからの信用を得てきているんだ.

結局,今のドイツを見て,EUのリーダーとして支持している人は,沈黙を以て支持してるんだという事.

人は,分かりやすいモデルを求め,ドイツ人に排斥・右傾化というレッテルを張りたがる.しかし,支持者は,沈黙を以てこれを支える.その沈黙の支持を理解し,むやみに自己弁護に走らない姿を,多くのEU諸国民はリーダーとして認めているんだ.こんな感じ.
うーん,自国に置き換えると胸がいてぇ.僕自身,現在の日本人の右傾化をなんとなく感じる.尖閣・竹島の昨今の問題がそれを加速化させていることは間違いないし,普通の反応でもあると思う.しかし,そういう姿勢は,周りの国からはアジアのリーダーとして支持されないだろう.

詰まるとことは,物質的繁栄と精神的繁栄のどちらをとるのか,という問題な気もする.精神的に,日本人はアジアのリーダーであろうとする気概を持ってるだろうか?

或る人が,これからは国家の時代ではなく,民衆の時代だといっていた.国家が情報をコントロールしきれなくなり,民衆が過去の歴史を自ら見て,理解することを欲している.これまでは,日本の経済力与える形で他国との関係の平穏を保ってきたが,そのギャップは縮まり続けている.

今の日本人に,アジアのリーダーたる気質・気概はあるか.性悪説で見て,色々な課題があるのは間違いない.しかし個人として,性善説的観点から,アジア稙国と共に繁栄を目指すという気持ちを持ちたいと思う.

  • kotsuking
  • 関東の某国立大学、教授。他に、JST・さきがけ研究員、理研・客員研究員、気象予報士。京都大学大学院で博士(工学)を取得。
    スーパーコンピューターを駆使して天気予報の改善に取り組むデータ同化研究者。座右の書は「7つの習慣」。

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