2012.04.04 [読書] 救国のレジリエンス & ヒトラーとケインズ

国債って,これからもどんどん発行していって良いものでしょうか.
民主党の批判やら中では書いてますが,僕としては受け売りに徹さず,自分で理性的に考えての結論のつもりです.

先に下のリンクの資料を2枚くらい見て頂きたい.
藤井聡先生の研究室資料より,16,17枚目をご覧ください.

公共投資って,今は必要なんじゃないかな.
日本ってもう成長止まったみたいな気がするけど,まだまだGDP伸びるんじゃないかな.
日本とアメリカ,EUの違いは何なのでしょう.

今はそんなことを考えていたりする.


今日は,マクロ経済系の読書の書評.
こういうテーマは結構興味があるので,ちょくちょく読んでいる.

僕は土木工学専攻なのですが,公共事業関連でマクロ経済に関しては一定の講義がある.
正直,どこまで分かってるのか分からん.

これは数式上の話ですが,定性的には知りたいところなので,上手にまとめてくれている人の中から,何冊か読んでみた.
メインはこの辺りでしょうか

・救国のレジリエンス(藤井聡)
・ヒトラーとケインズ(武田知弘)
・サムスン栄えて不幸になる韓国経済(三橋貴明)

見る人が見たら分かるが,結構偏った人選.
彼らは基本的にケインズ経済学に則り,公共事業を駆使して日本の景気を高めて行こうという論調を取っている.

ケインズ経済とは,公共事業に投資した際の乗数効果を期待する経済学である.

1.公共投資すると,土木業界の景気が良くなり,普段よりお金と使う(例えば衣類).
2.衣類業界の景気が良くなり,贅沢な食生活をする.
3.食品業界が...

みたいな感じで,初期の投資額の乗数上のお金が動く,というもの.
言うまでもなく,初期の公共投資の出所は,国債発行である.

この乗数効果については色んな期間が研究を行っているようで,これを藤井先生の本ではまとめた図があった.
8つのモデルで推定してるんですが,まとめると

5年後の乗数効果(%)

3.5~4.0% : 東洋経済エコノメイト
3.0~3.5% : 電力中央研究所
2.5~3.0% : なし
2.0~2.5% : 中期マクロモデル,DEMIOS
1.5~2.0% : 日経センター,国際東アジア研究センター,日経NEEDS
1.0~1.5% : なし
0.5~1.0% : なし
0.0~0.5% : 内閣府(民主党政権)

僕はこういった業界に詳しいわけではないが,これはひどい.
明らかに内閣府の値が,他のモデルより低すぎる.

疑い1. 筆者が自分の主張をとおすために,そういうモデルの選定を行った.
疑い2. 内閣府の数字が故意に変えられている.

多分,こういうモデルってパラメータ依存が大きくて,値自体はなんとでもなるような気がする.
(どっかで三橋貴明さんがこういう指摘をしてた気がする.内閣府のモデルで使ってるパラメータはおかしいと.また分かったら追記します.)

民主党は,”コンクリートから人へ”のスローガンからも分かるように,公共投資を減らして行こうという政策を取っている.その政策を取る上では,”乗数効果なんて無かったんや”みたいな裏付けが欲しいと思われるので,こういった値になったんじゃないかと,疑いたくもなってしまう.

いずれにせよ,乗数効果が0というわけではないので,公共投資が経済を刺激するというのは間違いないでしょう.
ここで問題になるのは,国債ををどこまで発行していいのか,という事.
これはかなり意見が2分されているように思える.

発行しちゃいけない側の主張は
・一日でこれだけ,日本の借金が増えてます.(これは感情的)
・国債を発行しすぎると,ジンバブエやドイツの様に,ハイパーインフレが起こる.
・ギリシャみたいにデフォルトして良いのか

発行していい側の主張は
・日本の国債は,国内への債権である.ギリシャ・ドイツ等と比べるのは的外れ(あちらは海外借金)
・国債は借金みたいな捉え方してるけど,国民が政府にしてる貯金ですよ(貸す先がないので,メガバンクが大量に国債を買っている模様)

僕も整理しきれてないんですが,国債を発行しても公共投資をするべきだ,という主張の方々は,基本的に,国債多すぎてヤバい説に反論を行っているように見える.

一方,国債多すぎてヤバい説の人は,大丈夫説に反論している様な論をあまり見たことがないし(こちらが大勢だからというのもあるかもしれない.).

また,ヤバい説の議論は基本的に最後の最後まで論理的に説明して無かったりもする.

”国債は,多いとヤバいもん”というのを,感情的には分かるが,そこにしっかりとロジックが通ってない(説明してくれない)ので,頭では分からない.

この辺り,良い本とか知ってたら,コメントとかで教えて頂きたい.
巷では,”日本は国債出しても大丈夫なんや”という論調の書籍は見るが,その逆はあまり見かけないのが実情.

ところで,ケインズ政策で良く例に出されるのがルーズベルトのニューディール政策です.最近は,これによって景気が回復したというのは誤りで,アメリカの景気が良くなったのは,日本との戦争に入ってからであるというのが一般的な見方.

一方,ヒトラーはかなり上手に乗数効果を引き出して,ドイツの景気を良くしたんだよという本が”ケインズとヒトラー”.
確かに,ドイツの景気が良くなったのは間違いないし,読むと,ヒトラー政権が丁寧にお金が循環する仕組みを構築していってる事が分かる.
本によれば,これまでの世界でもっともよく乗数効果を発揮したのはナチス政権とのこと(これはナチスの政治に賛成するとかそういう意味じゃありません.).

まぁしかし,いずれドイツの経済は破綻しただろうとの指摘もあるし,本当のところは良く分からん.

いずれにせよ,デフレ下,不況下での公共投資は,ケインズも指摘しているように効果的だと思うし,今の日本にいも必要なんじゃないかと,今の時点では僕は思ってます.

(逆に,景気の良い時に国債を刷ってまで公共投資はすべきでないというのがケインズ経済.日本は個々を誤った,らしい.)

ニューディール政策も,ドイツの場合も,景気の悪化を底打ちさせたのは確か.

デフレ下の根本の問題は,お金が回らない事なので,それを解決しなきゃならんのだとは思う.

僕自身もしっかり理解してるわけじゃないんで,以上の議論は自分でも考えてみてください.
今日挙げた本自体は,どれも面白かったと思ってます.

しかし何度も書くが,藤井先生の資料の16,17枚目の資料は衝撃的である.



救国のレジリエンス 「列島強靱化」でGDP900兆円の日本が生まれる


ヒトラーとケインズ(祥伝社新書203) (祥伝社新書 203)

  • kotsuking
  • 関東の某国立大学、准教授。他に、JST・さきがけ研究員、理研・客員研究員、気象予報士。京都大学大学院で博士(工学)を取得。
    スーパーコンピューターを駆使して天気予報の改善に取り組むデータ同化研究者。座右の書は「7つの習慣」。

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