2019.12.27 [読書] 臨床の知とは何か

お気に入りの一冊を知人に勧めてもらいました。
第一観、キツイ。これが面白いと思えてるってことは、思考能力・言語能力は完全に置いてかれてる。
新しい分野の話って、自分の獲得した知識と比定させながら読み解いていくよりない。
僕の場合は、「科学哲学」を軸にしてその対比で読み解いては見たが、その議論の全ては追えなかった。
まだまだ修行が必要。

論点は明確で、「臨床の知=個々の場合や場所を重視し、深層の現実に関わり、世界や他者が我々に示す隠された意味を相互作用のうちに読み取り、捉える」を主張したい。
そのための論考は、まぁ哲学者だからしょうがないんだろうけど、捏ね繰り回された感もある。
ただ、その前提となる議論をしっかり理解できていないこともあって(e.g., 現象学)、議論は全部追えていないのかもしれない。
哲学分野を一通り学んでから回帰すれば、また新しい発見がありそうな気はする。

著者の指摘するように、「普遍」から「個性」への回帰は、多くの世界に見られる潮流の様にも思う。
一つは、グローバリズムからローカリズムへの回帰。
また、研究でもローカル型研究への評価が、もう一度高まりつつあるように思う。
また、「物事を関係性から捉えよう」といった発想も、この30年間に起こり始めている潮流のような気がする。
(e.g.,システム・ダイナミクス、人と~のインタラクション、ネットワーク・グラフ理論)

そこまで考えて、自分の研究人生は何に捧げるべきか、というのもよく分からなくなってきた。
データ同化・天気予報は勝てるゲームではあるが、パイオニアではない。
それでも、まずは没頭がなければ始まらない。予言の自己成就。

追記: 結構タフだったので時間がかかることが分かった。また更新します。


  • 導入
    •  チェーホフの「手帖」
      • 控えめな男のためのお祝い会。食事も終わろうかという時、当の本人を招待するのを忘れていた。
      • 「理論や学問」と「現実」のズレを表現する良い比喩。
      • 現実はいつも謙虚であり、主張することなく、深淵からこちらを見ている。
    • 科学一般の認識
      • 過去:理性によって背後にある構造を確実化させる
      • 現在:身体的経験に基づいて、認識に新たな意味が生じる
    • 近代科学の自然観:自然を人間に役立たせるための技術的開発の対象
    •  近代科学が無視してきた「リアリティ」とは?
      • 1. 生命現象
      • 2. 関係の相互性、相手との交流
    •  近代科学の武器
      • 普遍性:理論の適用範囲は極めて広い
      • 論理性:1つの原因に対する1つの結果
      • 客観性:主観と客観、主体と対象の分離・断絶
      • 他者の説得に極めて有効
    • 「臨床の知」の目的意識
      • コスモロジー(≒環世界)=固有世界
      • シンボリズム(≒多様性)=事物の多様性
      • パフォーマンス=身体性を備えた行為
      • 個々の場所や時間の中で、対象の多義性を十分考慮に入れながら、それとの交流の中で事象を捉える
      • 決定的に大事になるのは、「経験」
  • 近代科学とは何だったのか?
    • 元々: アリストテレス的な自然観=自然派類比関係で捉われていた
      • 適合、競合、類比、共感
    • 転換: 自然を因果関係で記述しようという潮流が起こった
      • 占星術:数学的合理性
      • 錬金術:実験と実証(再現性)
    • 機械論の発見
      • 精神と物体の分離
      • 「自然の数学化」が、自然の帰納的予見を可能にした
  • 臨床の知を科学の知との対比から捉える
    • 科学:抽象的な普遍性によって、分析的に因果律に従う現実に関わり、それを操作的に対象化する
    • 臨床:個々の場合や場所を重視し、深層の現実に関わり、世界や他者が我々に示す隠された意味を相互作用のうちに読み取り、捉える
    • 科学:冷ややかなまなざし
    • 臨床:諸感覚の協働に基づく、共通感覚的な知。
    • 科学:仮説と演繹的推理と実験の反復
    • 臨床:直感と経験、類推の積み重ね
  •  テーマ:経験
    • 身体を備えた主体として、他者からの働きかけによる受動=受苦にさらされること
    • 西田幾多郎の純粋経験:「経験するとは事実をそのまま知ること。事実そのものに従うこと。」
    • 個人があって経験があるのではなく、経験があって個人になるのである(実存主義的???)
  • メモ
    • 「一般化」と「ふるい落とされた個性」が主要テーマ
      • 「全球の研究は薄くないですか?」の議論に既視感もある
  •  気になったこと
    • 「ざらざらとした」という表現が良く使われる。 (e.g. 11/30のヴィトゲンシュタイン研究者)。そういう世界なのか?
    • フッサールの現象学を勉強しときたい。良く議論に出てくるけど、何した人なのかよくわかっていない。
  • kotsuking
  • 関東の某国立大学、准教授。他に、JST・さきがけ研究員、理研・客員研究員、気象予報士。京都大学大学院で博士(工学)を取得。
    スーパーコンピューターを駆使して天気予報の改善に取り組むデータ同化研究者。座右の書は「7つの習慣」。

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