20121010 [読書] 武器としての決断思考

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武器としての決断思考 (瀧本哲史)

なかなか勉強になった。簡潔に本の内容を述べると,実際にディベートを行うという想定の下で,議論を行う上での注意点を述べた本.そういった議論を通じて,最終的に自分の頭の中で議論を行い,今後の意思決定に活かしていって欲しい,というのが作者の理想.
何でこういう本が今の僕に受けたかというと,巷や身の回りで,意思決定を催促するロジックがおかしいだろってことが良くあったから.デメリットのみを挙げての原発不要論.こういうメリットもありますよ,というと,事故が起こって汚染されても良いのか,と来る.そういうことを言いたい訳じゃない.

○○先生が言ってたからという,行動の催促.僕の考えでは,そのロジックは理解できないんですが,というと,○○先生の意思に逆らうのか,と来る.そういうことを言いたい訳じゃない.

とはいえ,以上の様な方法は”自らの意思を通す”ための立派な方法ではあると思う.少なくとも,ロジカルでは無いし,議論では無い.まぁしかし,悪用とならない範囲で自らの主張を通す方法を学ぶことも大事だし,逆に他者の無理強いを見抜くのも大事.

僕自身,議論を自分の意思を通すことと混同する.ちょうど良い議論とは何か,というのを学びたいところでした.作者自身が最初に,議論を定義している.

議論とは,正解を導くことでは無く,現時点での最善解を導くことである.

議論とは,論破では無い.お互いの意見を尊重し合って,結論を昇華させるのが目的のはずである.相手の意見への反論は,相手の人格の否定では無い.日本人はこの辺苦手らしい.非常に反省.

人から諭されたりするとき,俺の人格を否定すんのかってなるときもあるんだが,そうじゃないですね.より良い自分を導くためのアドバイスだと,頭では分かってる.これからはもっと謙虚に受け止められるように努力します.

前置き長くなりましたが,僕自身のためにも本の内容を要約.
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ディベートでは,基本的に何らかの意思決定(決断)に対して,メリット・デメリットの観点から議論する.

第一にメリット側の主張,デメリット側の主張は下記に従う必要がある.

メリット側の3条件
1.内因性(問題がある)
2.重要性(その問題が重要である)
3.解決性(対策により,その問題が解決する)

メリット主張の例
1.日本の原発は大地震が起こると爆発する可能性がある
2.大爆発が起こると周辺地域が放射能に汚染される
3.原発を全廃すれば,事故の可能性は無くなる

デメリット側の3条件
1.発生過程(新たな問題が生じる)
2.深刻性(その問題が重要である)
3.固有性(現状では,その問題は生じていない)

デメリット主張の例
1.原発の発電量を他の発電手法でまかなう必要がある
2.他の発電では,原発の発電を賄いきれない
3.現状ではその問題は生じていない

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第二に,メリット側・デメリット側の主張に対して反論を行う必要がある.
どちらの主張展開もA→B→Cというロジカルツリーになっているので,A,B,Cのいずれかを否認しきれば,主張は通らなくなる.

メリット側への反論
1.内因性(問題がある)
→対策をとらずとも問題は解決する
→そもそも現状に問題が無い
2.重要性(その問題が重要である)
→質的に問題で無い
→量的に問題で無い
3.解決性(対策により,その問題が解決する)
→プランをとると別の問題が生起する
→プランが正しく問題を解決しない(因果律の不理解)
→プランをとることによる機会費用の喪失(現状維持の際に享受できた便益)

デメリット側への反論
1.発生過程(新たな問題あ生じる)
→プランだけでデメリットの発生に至らない(因果律の不理解)
→デメリットの発生に至る理由として弱い
2.深刻性(その問題が重要である)
→質的に問題で無い
→量的に問題で無い
3.固有性(現状では,その問題は生じていない)
→プランをとらずとも問題は起こる
→プランをとらずとも,そもそも将来起こりうる問題

こういう思考の癖を,普段からつけていきたいものである.

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推論について.推論とは,A→Bの因果関係を記述する論理であるが,以下の様な問題が得てして起こる.

ⅰ)因果関係が逆
ⅱ)因果関係と相関関係の混同
ⅲ)特定の原因のみに着目

ⅰ)の例としては,良く二酸化炭素濃度と気温上昇についても指摘が上がる.気温上昇によって海水中の二酸化炭素が排出されるフィードバック効果もあるため,二酸化炭素濃度上昇のみにより原因を記述するのはナンセンス.

ⅱ)こちらも,先の例で良く上がる.僕はこの25年間で身長が伸びたが,25年間の間地球平均気温は上昇してきた.その間には相関関係がある.なので,僕の身長が伸びたことが地球温暖化の原因である(因果関係).

因果関係と相関関係の取り違いは,紛らわしい状況だと見過ごす可能性がある.また,何かの原因があって,それが二つの効果を生み出す場合,その二つにも相関関係が生まれる.都市化が,野鳥の減少と少子化を生み出した場合,野鳥の減少と少子化の間にも相関関係が生まれる.

ⅲ)作中ではこんな例があった.大阪の水道水中のトリハロメタン濃度は,沖縄の3倍.大阪の発癌率は,沖縄のそれの2倍高い
以上のように,大阪の水道水は危険である.こちらは,もっと様々な要素が考え得るのに,特定の問題のみに着目してトピックを立てた例である.

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作中で述べられていた,悪意ある議論の進め方への例もなかなか面白い.

例1,適当に賛成・反対の意見をばらまき,議論の収集をつかなくさせる.
結論を得ず,結局現状維持となることを導く.これは,日本人はデメリットを重視しすぎる傾向もあってよく使われるらしい.この問題に対しては,「先延ばしは現状維持という結論である」ことをもっと意識せねばならない.

例2,相手の無意識の推論をつく
例えば,「大きい会社に入社したら,安定した収入が得られるよね.だから云々」みたいな場合.この場合,前提状況は普段あまり考えてないので,突っ込みを入れると意外とうろたえる.論理はA→Zのどこかが破綻すれば成立しなくなるので,相手が”当たり前”の事を敢えて指摘すると,議論が優位に進む.

この当たりの悪意ある使い方は,自分の防衛をするためにも知っておく必要がある.本を読んで振り返ってみると,特に2個目に関しては,あぁ,こいつはうまく使ってたって人が居たりする.

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最後に,議論を進める上での注意点.

○ すべての人は,ポジショントークをする癖がある.
心理学ではアンカリングって言われてたりする.これまで自分が行ってきたことを否定したくないので,過去の自分の行為を正当化する癖が,人間にはある.パラレルワールド理論って名前をつけている.人生は選択を経るごとに様々なパラレルワールドがあり得ると思うのだが,自分の選んだ選択を信じたいって気持ちがあるんじゃないかと.

○ 人に聞くときは,結論では無く理由(ソース)を聞く
こちらは,偉い人の意見に,思考停止してしまわないように

○ インタビューでは一般論では無く例外を聞く
例えば,「コンサル業界は学歴重視」と言う人に,「例外的に低学歴で活躍している人はどんな人ですか?」と聞く。学歴でない,もっと根底の重要点・基盤を知る事が出来る.

○ 舐められたもんがち
分かってはいるが,なかなか今の僕には難しい.でも,「しゃーないなー」って感じの人にこそ,他人は教えてくれると思う.可愛げはもっと手に入れたいですね.また,教えてもらったときは素直に感心できるような人間になりたい.

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