20120318 [読書] 未曽有と想定外

畑村洋太郎: 未曽有と想定外

・対抗姿勢の限界
防災学では,費用対コストの面からも,”ハードによる防災”から”ハードとソフトの併用”によるべきだというように,思想の変化が起こっている。筆者は,人命を救うという事を第一命題とするのであれば,”ソフト”の対策,つまり住民の避難意識の向上は不可欠であろうと指摘している.

自然災害への根本的な問題として,全てをハードで防ぐのは無理である事(だからと言って無くても良いというものではない).堤防があるから大丈夫という発想が,根本的に危ない.ここで挙げられた自動車事故の例は納得しやすい.曰く,”自動車の安全性を上げる取り組みは数多く行われてきたが,自動車の事故率自体はほとんど変化していない.”とのこと.人の慢心によるものである

高知県出身の地震科学者,寺田虎彦の言葉は,2つの面で本質をついている.
“天災は忘れたころにやってくる.”
1つ目は,人間は忘れやすい(易きに流れやすい)動物であるという事.
2つ目は,自然災害自体は,忠実に,必ず繰り返すという事.

・思考停止
最近の僕のテーマでもありますが.”未曽有”,”想定外”という言葉で,思考を停止させていないか?

津波災害,原発事故がなぜ起こったのか.被害を少なくすることはできなかったのか.災害の後には,こういった問題の追求が,次の災害を防ぐ事前の策となります.”未曽有”,”想定外”という言葉で,問題の追及を止めてはいけない.特に科学者・政策者は,問題の根本を考えないのはあってはならない事.
##思考停止

また,人間の特性かもしれないが,”見たくない者は見ない”という傾向があるのは事実.
“事故が起こらないためにどうするか”といった問題に対しては,みんな真剣に考える.しかし,”事故が起こった後にどうするか”という事は,見たくないので考えない.

・原発の費用の問題(知識として)
原発促進のためによくいわれる言葉で,”安価”という事がある.しかし,廃炉にかかるコストを考えると,全然安く無くなるというのは知っといてね,とのこと.

確かに,これは言われないと気づかない.先日報道で,フランスにある廃炉後の原発処理の問題を見た.作業員が,原発建屋のネジの一本一本に至るまで,丹念に化学薬品による処理を行っていた.気の遠くなる作業である.

放射性廃棄物は,一般には地下深層に埋めて処理するのが普通でしょう.半減期を根拠に,出てくるまでの年月で安全性を担保しようという考え.ただ,そもそもの”時間の解決”という発想に,違和感が浮かぶ.先ほどの,問題の先送りに近い様な気もする.

  • kotsuking
  • 関東の某国立大学、准教授。他に、JST・さきがけ研究員、理研・客員研究員、気象予報士。京都大学大学院で博士(工学)を取得。
    スーパーコンピューターを駆使して天気予報の改善に取り組むデータ同化研究者。座右の書は「7つの習慣」。

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