20091231 [読書] 行動経済学 & 社会的ジレンマの処方箋

行動経済学 経済は「感情」で動いている (友野典男)
社会的ジレンマの処方箋 (藤井聡)

あなたは1000円を渡され、見知らぬ誰かと分けるように言われた。
全額手元に置いておいてもいいし、一部を自分、残りを相手に渡してもいい。 ただし、相手には拒否権があり、相手がその案を受諾したらあなたの提案通りに配分されるが、相手が拒否したら二人とも1円ももらえない。 さて、どう提案するか?おそらく、大体の人が自分を400~800円位にする.

ところで、現在の標準的経済学が考えているすべての人は「完全に合理的」な判断をする。「完全に合理的」とは、自分の利益を最大にすることで、他人の不利益はまったく考慮しない。
すべての人が「完全に合理的」な社会で、人は先ほどの問題に対してどのような答えを出すのか。答えは 自分を999円、相手を1円 に配分する。
なぜなら、相手も「完全に合理的」であるから、1円以上であれば必ずYESという。であれば、あなたの利益を最大にするには、自分を999円にするのである。

一昔前の経済モデルはこの様な「完全に合理的な人」を仮定していたが,最近は人間の感情・意思決定バイアスまで含めたモデルを作ろうとしている.
今後の行動経済学に期待。

ところで,「完全に合理的な人」とは何か?
例えば,ごみのポイ捨て等は自分は困らない.

このような人が社会に出たら、万引きはするし、果ては殺人もいとわないだろう。
実際にはこのような行動を制限するためにモラルや法律が存在する。
それにより、そのような人に不利益というファンクションを持たせるわけである。
(リヴァイアサン,夜警国家論)

別に,何故モラルが必要かというのが社会的ジレンマの話.
社会学で有名な,「羊飼いの幸福」というモデルで説明する.
大学院の藤井聡先生の講義より.

ある一定の土地に、羊飼いが5人住んでいたとする。
羊飼いは自分の暮らしを豊かにしたい。
羊の毛をもっとたくさん収穫しなければ。
そのために、羊の数を増やそう。
(幸福の最大化)

5人がこの発想にたどりつき、5人とも羊の数を増やしだした。
羊は草を食べる。
そして草を羊が食べつくしたとき、羊は生きていけなくなる。
羊を失った羊飼い達は、路頭に迷う。
(共有地の悲劇)

羊飼いはこれを理解して、羊の数を増やさないことにした。
(モラルの誕生)

しかし一人が、自分の利益を優先して羊の数を増やし続ける。
やがて、その一人の羊飼いは富を独占していく。
いずれ、4人の羊飼いはこの一人のために淘汰されてしまう.
(資本主義)

この話からの学びは2点ある.
1つ目は,「全体の最適解」と「個人の最適解」は逆である、ということ。
例えば、寒いから暖房をつける。自分は満足だが、CO2が増え、巡り巡って地球の気温が上がってみんなが不幸になる。
この様なモデルは世の中に多く存在する.

2つ目は, モラルにも限界があり、それを防ごうとする律が必要であるということ。
ただ一人の最適化行動をする羊飼いをなくすには、みんなで規則を作るしかない。
けど、その規則でも羊飼いを制限できなかったらどうするのか???
法律やモラルというのは、人々の個人の最適行動を制限し、全体として社会の最適行動を目指すために存在するのだろう.

リンクして,高校時代の漢文・亀山先生の話.
歴史上、法家思想で国を統治しようとした秦は早く滅び、儒教で国を統治した漢は長く栄えることができた。
法によって縛りえない行動は,より強い方によってしか果たし得ない.
イスラエルの幼稚園のお迎え遅刻,罰金制度の話も似た話.
モラルを,金銭的・身体的損得に置き換えると,もうそれによってしか制御し得ない.

partially written in 2018.03.29

  • kotsuking
  • 理研・計算科学研究センター研究員、文部科学省卓越研究員、気象予報士。
    京都大学大学院で博士(工学)を取得。
    スーパーコンピューターを駆使して天気予報の改善に取り組むデータ同化研究者。
    座右の書は「7つの習慣」。

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